公益法人会計雑感

―「門前の小僧」のたわごと―(筆者・川崎貴嗣)

第4回(番外編) (2001/02/13)
今回は、本欄の趣旨を外れて、公益法人受難の始まりを書く。題して
「純正公益法人の生みの苦しみか」

 公益法人に対する行政の風当たりが急激に強まってきた。昨年末に閣議決定した行革大綱は、国から補助金や委託費を受けて検査・検定・認定・資格付与等の事務・事業を行っている「行政委託型法人」が、公益法人改革の目玉であった。ところが周知の通り、改革という名の下での見直し対象が、ここにきて一気に国所管全法人に拡大されたのであるから、これは従来とは様変わりの受難と言っていいだろう。きっかけは、言わずとも知れたKSD政界汚職事件だが、何しろ行財政改革に政治生命を賭ける? 橋本行革担当相じきじきの指示だから、今度ばかりは行政側も本腰で取り組まざるを得ないだろう。この動きは、都道府県所管法人にも波及する公算大である。
 公益法人総点検によって、国から請け負ってきた事務や事業を取り上げられる法人が多数出てくることは行革大綱の示すところであり、また結果如何で国が関与しない法人にも何らかの形で厳しいペナルティーを科すケースが生じてこよう。受難の第一が、これである。
 第二の受難は、公益希薄法人の追出しを狙った法案がいよいよ今国会に提出されることだ。法案成立は確実で、この新法創設によって、これまで公益法人という金看板を掲げてきた、公益性が薄いと見なされる同業者団体型法人、特定職域互助型・共済型法人等は、民法34条の範疇から退場を迫られることが確定的となる。公益法人ゆえの「原則非課税」という現行税制も、近く「原則課税」の方向に固まる方針だから、公益法人の資格を剥奪されるこの種の法人(「共同法人」と仮称)は、現在付与されている税の恩典をすべて失う。公益法人総点検は、共同法人移行問題に一層の弾みをつけることになると予想される。
 公益法人受難の第三は、営利法人等への転換督励が本格化することである。この転換指針は、すでに3年前の平成10年12月に策定されているものの、これが遅々として進んでいないのが実情だ。その背景には、官側が転換指導に消極的であること、何とか現状維持を図るべく水面下で抵抗していることを指摘する向きもある。いずれにしろ、転換指針は、いまのところ有名無実の作文でしかないが、仮にその指摘が事実であるとしても、行革大綱の本義からすれば、もはや官側の抵抗もいまが限界だ。見逃されてきた収益事業過大の法人や事業内容が営利企業と変わらぬ法人に対して、総点検を契機にこの際営利転換を強く迫らざるを得ないことになるだろう。営利転換問題は、官の消極性や抵抗ばかりでなく、公益法人側の抵抗のほうがむしろ強いことは言うまでもない。官の庇護(独占容認、規制維持)があればこそ、市場競争に晒されることなく収益を上げることが出来た。その庇護が取り払われれば、生き馬の目を抜く企業社会に、言うなれば温室から寒風の真っ只中に放り出されるわけだから、営利転換を督励される法人にとって自由競争は脅威であり、生存権に関わる問題に発展しかねない。
 過去、公益法人受難の場面は幾度か見られたが、行政が採った措置は生温いものがあったと言わざるを得ない。指導監督基準に代表されるように、ことある度に締め付けが行われたとは言え、従来の慣例――金融機関並みの護送船団方式をそう簡単に突き崩すまでに到らなかった。目に余る行為はともかく、多少のお目こぼしは官側にとっても何かと好都合だったわけである。如何なる公益法人であっても、その金看板は官僚OBの再就職先、世に言う天下りの受け皿として魅力的であるし、OBを受け入れる法人にとっても所管官庁との関係強化というメリットがある。その利害の一致・癒着が疑惑を招き、公益法人に対する世間の悪評を生んだ。そうでも考えなければ、今回のような逆風は起きなかったであろう。
 視点を変えると、この公益法人改革では国も難題を抱え込むことになる。特に補助金や委託費をもろに大幅カットされる行政委託型法人の多くは、事業縮小などで立ちどころに財政難に陥るだろうから、そこで働く職員の雇用が問題化するのは火を見るより明らかである。公益法人白書(平成12年度版)によると、国所管法人の常勤職員は一法人平均30人、補助金・委託費を受けている法人数は1,076法人で、単純計算すると行政委託型法人の常勤職員数は32,280人となる。一方、都道府県所管法人は一法人平均14.4人、補助金・委託費を受けている法人数は7,951法人だから、同様の計算では114,494人に上る。これら職員の何割かがリストラの対象になるのは確実で、財政難によるリストラが公益法人の分野でも表面化することは必至の情勢だ。行政委託型公益法人等改革推進室(行政改革推進事務局)もこの問題を深刻に受け止めているが、救済方法には妙案が浮かばないという。
 公益法人にとっての、この3つの受難は、公益法人改革のいわば3点セット実施で生じるものだ。21世紀社会を動かす主役のひとりが公益法人であるとすれば、主役の主役たる社会的評価を不動のものとするためには、この受難は「擬似公益法人」(武田昌輔成蹊大学名誉教授)を掃除する意味で避けては通れないプロセスであり、改革には必ず犠牲を伴うから国も返り血を浴びる覚悟だろう。そして、この3点セットが有効に機能した結果、存続が認知されるのはまさに純正公益法人のみとなる。これを本来型公益法人だと規定すれば、その数どの程度の規模になるだろう。上掲白書は、本来型公益法人の全体に占める割合を85.2%(22,445法人)と報告しているが、この高率について個人的感想を言わせてもらえば、会計基準の全面適用率同様に鵜呑みにすることを留保したい。ただ、改革3点セットが狙い通りの実効を上げれば、いずれ何年か先には法人数は減るものの本来型公益法人が100%を占めることになる。そうでなければ犠牲を払ってまで実施した改革の意味もないし、目的を達したことにならない。

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