■第9回九州部会記
日時 2016年7月9日(土)
場所 久留米大学
部会報告
第1報告「公園維持管理における組織と人の役割」
山内元六氏(山鹿市役所)

 本報告では、公園施設の事例分析を通じ、「協働概念に基づくアソシエーション組織」の検討を行った。熊本県山鹿市の“湯の瀬川公園”では、国や市、地域住民や公園利用者といったメンバーから構成される“菊池川育てねっと”が公園の維持管理を行っている。この官民連携の組織は様々なステークホルダーから構成されており、R.M.マッキーバーが提唱した「社会集団類型のアソシエーション」であると考えられる。また、官民が協力して清掃等の維持管理活動に取り組んでいることから協働概念に基づく活動であるとも考えられる。この事例から、共通の目的が存在する際には、アソシエーションと協働概念が紐づけられることを明らかにした(文責:山内)。

第2報告「防災と地域ガバナンス ― 被災者支援のあり方を中心に ― 」
黒木誉之氏(長崎県立大学)

 熊本地震の特徴は、車中泊避難等による指定避難所以外での避難者の多さである。この問題は熊本県だけの問題ではなく、熊本県以外の地域も今後対応を検討しておく必要がある。そこで今回の調査は、震源地となった熊本県益ましきまち城町を対象に、①指定避難所以外で被災者が避難された場所を確認(条件の抽出)し、②その場所に避難された被災者への救援活動の実態を調査し課題等を明らかにすることを目的として行った。
 現段階の調査結果として、①について、公園やショッピングモール、コンビニエンスストア等の駐車場に加え、幹線道路の路肩等について報告を行った。②については、企業やNGO・NPOの活動のみならず、SNSの活用による個人の活動が行政や団体による活動の隙間を埋めているとの報告を行った。
 今後は現地での継続調査に加え、東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町での調査も実施予定である(文責:黒木)。

第3報告「非営利組織体会計における純資産分類の意義と財務評価」
日野修造氏(中村学園大学)

 非営利組織体の財務評価と純資産の分類には密接な関係があると考え、純資産分類の意義と財務評価に焦点を当てて、報告を行った。また検討の基点は、アメリカの非営利組織体会計に関する文献である。
 検討の手順はまず、純資産の各分類手法を確認した。次に非営利組織体の財務評価は財務的弾力性、ハードマネー創出能力及び純資産の維持により評価することを明らかにした上で、一時拘束純資産に着目した財務分析について私見を述べた。
 結果として、非営利組織体の純資産は資源提供者の提供資源に対する拘束の影響を考慮することが極めて重要であるとした。そして、さらに一時拘束純資産の分類区分を設けることで、より充実した財務評価・分析が可能になることを明らかにした(文責:日野)。

■第8回九州部会記
日時 2015年12月19日(土)
場所 熊本県立大学
1. 基調講演
「非営利組織会計基準の統一化に向けた 課題と展望 ― 日本公認会計協会『論点整理』に寄せて ―」
藤井秀樹氏(京都大学)
 本年(2015年)5月に公表された日本公認会計士協会『非営利組織の財務報告の在り方に関する論点整理』に拠りながら、基準統一化に向けた課題を整理し、当該問題の今後の展開方向を展望した。海外(とりわけ英米)の先例との異動及び企業会計との関係に焦点を当てた検討を行った結果、⑴非営利組織の範囲や財務報告の目的については海外の先例と相違はないが、⑵企業会計の枠組みから独立した非営利組織会計の枠組みを構築しようとしている点、⑶基礎概念については個別文書を作らず、会計基準に組み込む形で示そうとしている点で、『論点整理』は独自のアプローチを採用していることが明らかとなった。企業会計基準委員会(ASBJ)との協力関係の形成が、今後の主要な課題のひとつとなろう(文責:藤井)。

部会報告
第1報告「非営利・公益法人としての私立大学」
伊佐 淳氏(久留米大学)

 日本の私立大学は、法制度上、非営利法人の一種である学校法人であり、広義の公益法人の範疇に位置付けられている。したがって、私立大学は、非営利の公益法人であるということができる。翻って、2014(平成26)年、学校教育法が改正されたが、そこに至る議論の過程では、大企業におけるガバナンスやマネジメントを、大学の運営者がお手本とするべきものとされた観がある。すなわち、素早い意思決定のためのガバナンスの構築や、学長の強力なリーダーシップによる教学部門の改革が強調されているのである。しかしながら、営利法人ではなく、非営利・公益法人としての私立大学においては、経営部門のトップに対するチェック・アンド・バランスを果たすためのガバナンスこそが重視されねばならないのではないか(文責:伊佐)。

第2報告「 農業における非営利法人の役割」
源田佳史(公認会計士)

 以下の3つの点について報告した。まず、①「農協法改正に伴う農協の非営利規定の削除に対する対応」では、農協運営における経済性や効率性を重視していった結果、反作用としての公益的な業務(生活購買や厚生事業)は、非営利法人へ移管する傾向を解説した。次に、②「TPP対応としての輸出農産物の各農業団体の調整機能としての中立性公平性の確保」では、農協や農業団体、農業関連企業が利益調整を行いつつ、「オール九州」としての農産物輸出やインバウンド需要喚起のための調整機能があることを紹介した。最後に、③「農業地域の担い手の高齢化に伴う耕作放棄地の拡大や鳥獣害対策のための非営利法人の活用」では、耕作放棄対策として農事組合法人の設立や農地中間管理機構(非営利法人)の活動支援がなされていることや、鳥獣害対策のための非営利活動の必要性を指摘した(文責:源田)。

第3報告「公立病院の経営改革の現状 ― 新公立病院改革ガイドライン(2015年)を踏まえて ―」(熊本県を事例として)
森 美智代氏(熊本県立大学)

 本報告では、2007年に公表された公立病院改革ガイドラインと2015年に公表された新公立病院改革ガイドラインの比較検討をした。 公立病院の運営は、自治体の管轄のもとで、公共サービスとして画一性が求められてきた。 また人事及び予算の権限は自治体にあり、予算至上主義によって医療機関の経営改善に遅れがあった。 しかし2000年代に入ると自治体には財政健全化計画の策定が義務付けられ(地方公共団体の財政の健全化に関する法律:2009年健全化法)、この法律とともに公立病院改革が進められてきた。 2007年ガイドラインでは①「経営効率化」②「再編・ネットワーク化」③「経営形態の見直し」が3つの柱となっている。これを継続して、2015年新ガイドラインでは、④「地域医療構想」を踏まえた役割が明確化された。 したがって公立病院の果たすべき役割の精査・病床の機能区分ごとの将来の病床数の必要量等が示され、地域医療構想が確認された。新しいガイドラインでは、特に経営の安定化のための目標指標が追加された。熊本の公立病院を事例として、経営改革の現状を紹介した(文責:森)。

■第7回九州部会記
日時 2015年10月10日(土)
場所 熊本県立大学
1. はじめに
 10月10日の非営利法人研究学会九州部会は、熊本県立大学が採択した「COC教育及び研究事業」におけるプロジェクトの研究会と合同で開催された。
 このCOCとは“Center Of Community”を意味し、COC事業研究会は、熊本県庁と熊本市都市政策研究所の協力を得て、県立大学の役割のひとつとして、地域の若い人々の教育に反映される研究を目指している。今回の研究会は、地域創成につながる教育と研究のために、県内市町村の財政と政策がどのようなものであるか、現場に直接携わっている方々との議論をとおして、「熊本県の将来」を考える研究会となった。

2. 部会報告第1報告 「熊本県及び熊本県内市町村の財政状況」
塚本直之氏・大瀬洋治氏(熊本県総務部財政課)高木秀和氏・宮崎龍一氏(熊本県総務部市町村・税務局市町村課)

 熊本県財政課からは、平成7年度以降の県債残高と基金残高の推移を通して、県の財政状況の推移とこれまでの行財政改革の取組み状況について説明があった。
 特に、平成20年度から23年度に取り組んだ熊本県財政再建戦略においては、平成19年度末に1兆693億円であった通常県債残高について、平成24年度末に1兆円を切るまで改善したことや、財政調整用4基金についても平成24年度末には82億円まで積み増すなど一定の成果があったことについて報告があった。
 市町村課からは、去る9月に速報値が公表された平成26年度の普通会計決算の概要をとおして、県内市町村の財政状況について説明があった。 財政の健全性を示す健全化判断比率は、4指標とも早期健全化基準を超える団体はなかったものの、財政の弾力性を示す経常収支比率は、対前年度2.2ポイント上昇し、若干、財政の硬直化が進んだことについて説明があった。
 また、近年、全国の市町村で増加傾向にある積立金の残高については、額そのものの推移にとどまらず、各団体の財政規模との比較等、様々な角度からの考察の必要性について言及があった。

第2報告「 指定管理者制度の役割と課題」
望月信幸氏(熊本県立大学)

 報告では、指定管理者制度の意義と役割を整理し、制度が抱える問題とその改善に向けた方向性を、大分県と大分県宇佐市の事例をもとに提示した。
 選定段階では、指定管理者のインセンティブを高めるような選定基準の必要性を示した。同時に、選定後は施設の運営管理を指定管理者に一任するのではなく、所管課による適切なモニタリングと状況把握が重要であり、特に所管課も施設運営の一端を担っているという責任意識を強く持つことが問題の改善につながることを明らかにした。さらには、所管課と指定管理者の間でコミュニケーションを高めることにより、情報共有の活発化と効率的な施設運営が可能になることを示した。最後に、このような課題の解決に向けたひとつの方法として、戦略マップの活用を提言した(文責:望月)。

第3報告 「自治体職員における専門性概念とその現状」
井寺美穂氏(熊本県立大学)

 先に開催された非営利法人研究学会第19回全国大会の研究報告(自由論題第3会場:第1報告)における質疑・助言を受け、その内容を反映させた報告を行った。先の報告では、基礎自治体における専門職員数に関する資料を用い、職種別及び市町村の規模別にそれらの配置状況について分析したが、今回の報告では資料上の数値だけでは読み取ることのできない実態にまで言及した。
 具体的には、各自治体は事務事業の特徴に合わせて、委託制度や補助制度、非常勤職員の配置等の手段により、専門性を外部から補完している事例を紹介した。 さらには民間企業や非営利団体等が専門性や高い技術力を保持し、規制緩和やアウトソーシング、官民パートナーシップ等が奨励される現代の公務員に求められる専門性について言及した(文責:井寺)。

 以上、第7回非営利法人研究学会九州部会は、熊本県立大学のCOC事業の研究会と合同に開催され、第3部による報告は、出席者からの質問も多く、出席者と報告者との白熱した議論がなされ、地域活性化のための有意義な部会となった。


■第6回九州部会記
日時 2015年8月2日(日)
場所 熊本県立大学
1. はじめに
 非営利法人研究学会第6回九州部会は、部会長である森美智代氏の司会進行の下、熊本県立大学にて同大学が実施するCOC教育及び研究事業における研究会と合同で開催した。なお、COCとは“Center Of Community”を意味し、地域の課題を解決するために大学が地域コミュニティの中核的存在として機能することを目的とする文部科学省の事業である。

2. 基調講演
吉村祐二( 新日本有限責任監査法人・公認会計士)
「独立行政法人会計基準の現状」

 特殊法人改革は1980年代のNTT、JT、JRの民営化を皮切りに道路公団(2005年)、郵政(2007年)など行政執行機関の機能の向上を図ってきた。
 本講演ではJRの民営化時点の資産債務の承継状況を把握し、財政面での地域インフラの維持方法を検証し、2004年に独法化した国立病院機構(以下「NHO」という。)と比較することによって、医療の実施主体としてのNHO財政構造を理解し、独立行政法人会計の課題を検証する。
 JRは旧国鉄が負っていた37.5兆円の債務をJR旅客会社等12の法人に分割承継させ、債務償還は主に運賃収入と不要財産処分で行うこととし、旅客会社6社のうち償還能力が見込めるJR東日本など3社のみが債務を5.7兆円負担、財政的に自立・自律的な経営を求められつつ地域インフラの維持を図ってきた。
 一方で、国立病院特別会計から154の病院・療養所を一体として承継発足したNHOは約1兆円の資産と約8,000億円の債務を承継したが、職員退職金約2,600億円は将来国が負担することとし、実質債務超過約600億円を回避した。NHOは法人化後、様々な取組みによって順調に収益を伸ばしてきたが、国営時代の職員退職金は国からの運営費交付金によって補填され、NHOでは損失が表面化しない。加えてNHOが承継した土地見合いの債務を償還するためには毎年度約250億円の余剰キャッシュフローが必要となることは財務諸表には表れない。
 ただし、独法会計基準には民間会計では作成されない行政サービス実施コスト計算書があり、国民負担となる金額(2004年度は603億円)である。行政サービス実施コストは経年で減少してきており、確実に改革の効果が表れていること、NHOの法人化が正解だったことが確認できる(文責:吉村)。
 この基調講演の後、COC教育及び研究事業における研究会に移された。

3. COC事業研究会
中野啓史(熊本市都市政策研究所)
「熊本市におけるコミュニティ政策の変遷とその特性」

 中野の報告は澤田道夫氏(熊本県立大学)をコメンテーターとして行った。
 本報告では、熊本市のコミュニティ政策の変遷を国の政策と比較しながら時系列で整理することを通して、市の政策の特色を考察した。国のコミュニティ政策が地縁を意図的に除外して開始され、市の政策と長らく乖離したものでありながら、2000年代以降、両者の基本的視座が地縁を含めた多様な主体との協働へと収斂していく様子を示した。
 以上に加え、市と地縁団体の一貫した関わりや、コミュニティの発展に応じた政策展開の有効性を市の政策の特性として指摘し、それらを踏まえた政策立案の必要性を提言した。
 報告後、コメンテーターを務めた澤田道夫氏より、今回の研究成果が、現在作業が進んでいる熊本市の「総合計画」等の策定にあたって、熊本市の地域力の底堅さを示す基礎資料として活用されるべく、行政内部でも広く情報発信するようご提案いただいた。また今後は、地域における様々な活動主体の性質や機能を整理し考察することで、研究がより深まっていくのではないかというアドバイスがあった(文責:中野)。
 その上で、澤田氏は以下のような問題提起をした。
 コミュニティという言葉は、現代日本においてもすっかり人口に膾炙(かいしゃ)している。しかしながら、その言葉がどのような文脈で語られているのかについては若干の注意が必要となる。1960年代からの所謂「コミュニティ政策」は、既存の町内会などを否定すべき前時代的なものと捉え、その存在を無視して進められたものであった。その結果、地域においてコミュニティ組織と町内会が競合するなど、様々な課題を抱えることとなった。現在では両者の概念は収斂しているが、今もなお「コミュニティ政策」と表現する場合、それがどのような意味合いで語られているのかに注意を払う必要がある。
 そこで、地域における活動主体を考察するため、地縁に基づくか/基づかないか、特定機能を果たすことを目的とするか/目的としないか、などを軸とする新たなモデルを提案したい。地縁に基づいており、特定機能を果たすことを目的としていないのが町内会などの地縁組織だとすれば、地縁に基づかず、特定機能を果たすことを目的としているのがNPO等であろう。
 また、地縁に基づきつつ、特定機能を果たそうとしているのが所謂テーマ型コミュニティであると言える。このような枠組みでコミュニティを捉え直す視座も、今後求められると考えられる(文責:澤田)。
 以上のコメントの後、質疑応答に入った。
 上記のような内容において、第6回九州部会は進められ、閉会した。部会の内容は有意義な研究会となった。

■第4回九州部会記
日時 2015年3月15日(日)
場所 熊本県立大学
 非営利法人研究学会第4回九州部会が、2015年3月15日(日)に熊本県立大学において開催された。

1. 会計報告、活動現状と今後の計画
 森美智代部会長より、第4回九州部会開会の挨拶後、資料に沿って、会員の確認、会計報告、部会事業報告(学会レポート)の説明がなされた。その後、部会報告に入る。

2. 部会報告
第1報告 井寺美穂氏(熊本県立大学)
「行政責任・行政統制の変容と『行政倫理』」

 井寺氏の報告では、C.E.ギルバートの行政責任・統制の分類に関する枠組みを用いながら、1990年代以降の我が国における行政責任および統制の変容に焦点をあて、特にその現象のひとつとして「行政倫理」が採り上げられた。
 そして、行政倫理が出現した背景やその概念定義に関して言及がなされた。公務員による汚職や不祥事が世間の関心を集めるなか、そもそも公務員や行政における倫理とは何か、それらの意義はどのようなものか等、行政倫理に対する基礎理論的アプローチが試みられた。

第2報告 河谷はるみ氏(九州看護福祉大学)
「介護保険制度における福祉と医療の連携」

 河谷氏の報告では、2014年介護保険法改正を踏まえて、①要介護認定とケアマネジメント、②地域包括支援センターと地域ケア会議を採り上げて、福祉と医療の組織論的アプローチが検討された。
 特に、地域ケア会議は、ミクロ(個別のケアマネジメント:介護サービス・医療との連携・インフォーマルサービスの調整・家族調整等)とマクロ(第6期介護保険事業計画:ニーズに応じたサービスと供給量の確保・基盤整備)を繋ぐ重要な会議だが、組織としての意思決定や誰がマネジメントを担うのか、については未解決のままである。
 また、福祉と医療の連携については、患者や利用者が生活している地域全体の実践課題でもあることも立証されなくてはならないとの指摘がなされた。

第3報告 伊佐淳氏(久留米大学)
「日本の私立大学政策について-現場からの視点-」

 伊佐氏の報告では、冒頭、米国の社会学者マーチン・トロウの「高等教育段階論」によると、高等教育への進学率が50%を超えると、高等教育は「ユニバーサル段階」へと移行するということが示された。日本の大学教育は、まさにこの段階に突入しており、学士課程教育の「質の保証」が強く求められるようになっている。
 しかしながら、そのための膨大な時間的・金銭的コストについては、各大学の持出しとなっている。他方、私立大学と国立大学との間には公財政支出に関する大きな格差があるうえに、私立大学を取り巻く環境の変化(少子化、国大法人化による学生募集等の強化など)によって、大学間競争が激化の一途を辿っており、特に地方私立大学は疲弊している。本報告では、学士課程教育の「質の保証」ひとつを採り上げてみても、日本の私立大学政策は矛盾を来している、と指摘された。

■第2回九州部会記
日時 2014年5月10日(土)午後2時〜
場所 久留米大学御み井いキャンパス
 非営利法人研究学会第2回九州部会が、平成26年5月10日(土)に久留米大学御み井いキャンパスにおいて開催された。なお、第1回九州部会は既に平成25年12月8日(日)熊本県立大学で開催されており、以下の報告と活発な議論がなされた。

 第1報告:井寺美穂氏(熊本県立大学)「 政府職員における倫理保持のための取組み−機能および逆機能−」
第2報告: 天川竜治氏(宇う城き市総務部総務課)「 平成の市町村合併について−合併の光と影−」
第3報告:川野祐二氏(下関市立大学)「 大学経営のガバナンス問題−制度批判と課題解決への挑戦−」
 今年の全国大会における自由論題に登壇予定の井寺氏の報告では、近年、政府職員の倫理を保持するための取組みとして倫理法や倫理条例が制定されていることに関連し、行政に対する信頼を確保し、職員倫理の保持・向上のために定立された倫理規範がもたらす機能及び逆機能について考察がなされた。まず中央及び地方政府の行政倫理制度の概要及び特徴に関する概説がなされたのち、それらの機能及び逆機能について指摘がなされた。 また、第3報告では、次回の部会の準備委員長を務める川野氏により、大学経営が機能不全に陥るのは、組織の設計思想に根本的問題があるからだとの指摘がなされた。健全な統治機能は「上手くいく仕組みがあること」と「上手くいかないときに是正する仕組みがあること」であるが、研究教育をミッションとしている大学は、「ミッション」から「経営」を分離して対置させるという、「上手くいかない仕組み」をわざわざ作り出している。研究教育と経営を対置させる制度を捨てて、「研究教育のための経営」を組織デザインすれば、統治機能は健全さを取り戻すとの見解が示された。

【研究報告】
第2回非営利法人研究学会九州部会では、九州部会長森美智代氏(熊本県立大学)の挨拶に引き続き、森美智代氏の司会のもとで、3つの報告が行われた。

第1報告
黒木誉之氏(熊本県立大学教務入試課)
「水俣市の内発的発展による地域再生−『もやい直し』を主軸とした市民協働の地域づくり−」
 現代における市民協働の地域づくりの在り方を探求することを目的に、水俣市の事例から報告がなされた。まず、内発的発展論を理論的枠組みとして同市の地域再生について分析がなされた。次に、近年の「もやい直し」に係る取組みの発展過程について考察がなされ、その過程で誕生した円卓会議は熟議デモクラシーのプラットフォームとして期待されるなどの報告がなされた。 以上の報告に対し、新たなキーパーソンの確認等のほか、論点の絞込みも必要であろうとの指摘がなされた。現在、在宅医療の推進が図られているが、なぜ今、在宅医療が求められているのか、進まない理由と考えられる課題を取り上げて、住み慣れた地域での在宅医療の仕組みをどのように構築したらよいのかが検討された。しかしその反面、在宅医療の普及には、診療報酬引上げによる推進の限界に加えて、在宅医療の整理と生活の質(QOL)、チーム医療の人件費や組織論的アプローチ、そして地域との交流や家族支援の視点も必要であるとの指摘がなされた。 各報告後に行われた質疑応答では、出席者から忌憚のない質疑がなされ、報告者との活発な議論が展開された。

第3報告
森美智代氏(熊本県立大学)
「西日本部会報告『最終報告書』の作成「地域における行政、医療及び福祉に関する現状と課題」について、各担当者が地域でみられる事例を挙げて、どのように対処すべきかを最終報告書にまとめることを確認した。最終報告書作成に向けて、書式の確認後(1頁:40字×38行、タイトル14ポイント、副題12ポイント)、具体的な内容(題目と構成)が検討された。 森美智代部会長の第2回九州部会閉会の挨拶に引き続き、伊佐淳幹事より懇親会の案内がなされた。第2報告河谷はるみ氏(九州看護福祉大学)「在宅医療を担う医療体制の在り方」